鳥が吸い込まれる| birds are inhaled

鳥が吸い込まれる| birds are inhaled

|statement
 2017年の春の事、突然自宅の壁から激しい音が断続的に聞こえた。聞き続けていると、鳥が集団で鳴いていた。高音でどこか湿っぽい質感だったのを覚えている。壁から騒がしく響く音が怖くもあったが、面白さが勝ったのか僕は映像で記録を録り始めた。姿形は見えないがどこからともなく鳴き声が響く。日が経つ毎に少しづつ鳥の鳴き声が消えていき、代わりに工事や騒音が激しく鳴り響くようになっていた。気がつくと僕はイヤホンを通してムクドリの鳴き声を探していた。 その時になって音はただ聞こえるのではなく、聞くものを具体的に選び聞き分けていることに気がついた。再び、鳴き声が聞こえた時は喜びに限りなく近い気持ちが起きたのだった。決して触れる事が出来ないにも関わらず、一つ一つしっかりと質感を持ち且つ触れているようなのだ。
 音を聞こうとする身体の態度などから、1年前に僕は一ヶ月ほど右耳が中耳炎になったことを思い出した。片耳だけが聞こえる状態は、眩暈にも似て音と僕との距離感を曖昧なものにした。いびつな立体感とも言えるものだったと思う。その後、投薬治療が効き耳が徐々に回復しつつある頃、音が聞こえているという実感を得た時に喜びが起きた。それは、イヤホン越しにムクドリの鳴き声を見つけた時と同様なものだ。
 僕は、知人からその女性の母親を紹介され、話を聞くことが出来た。彼女は、幼い頃に中耳炎となって以来、耳が聞こえづらくなってしまったと言う。追い打ちをかけるように三十代の頃に右耳を手術をしたが結果、右耳の聴力は上がることはなく、むしろ下がってしまったのだった。展示している映像にも出てくる話ではあるが、彼女は趣味でコーラスをしている。「他者の声と重なるハーモーニーが楽しい」と言っていた。僕は、彼女が身体を通して他者の声と自身の声が共振していることに喜びを見出しているように思えた。

|未来の途中プロジェクト2017「ゴーストに矛と盾」
2017.12/9-24
ARTZONE 2F
京都工芸繊維大学美術工芸資料館が若手作家の成長を支援する「未来の途中」プロジェクトにて二人展の企画を受け《鳥が吸い込まれる》を発表
素材:ink-jet print,耳鏡、映像、スタイロフォーム、カセットテープ
主催:京都工芸繊維大学美術工芸資料館
協力:京都造形芸術大学アートプロデュース学科
企画:京都工芸繊維大学美術工芸資料館、京都造形芸術大学ARTZONE
http://www.museum.kit.ac.jp/nap2017.html#20171209
http://artzone.jp/?p=3195

趣味カテゴリの最新記事